神様のおはなし  

―海と山の交わり―

今回は海の神のお話です。

 海の神は‘わだつみのかみ’と呼ばれ、古事記の中ではイザナギ・イザナミのご夫婦から生まれた神の一柱で綿津見神、また日本書紀の中では海神と記されています

この神が長い長い神話の中で登場するのはお生まれの時と、海幸彦・山幸彦の物語の中でとなります。

海に出て漁をしていた海幸彦と山に入って猟をしていた山幸彦はある時、お互いの道具である釣り竿と弓矢を交換して持ち場を換えてみました。ところが慣れぬ山幸は兄の釣り針を海で無くしていまい、詫びて自らの刀を溶かして釣り針を千個作ったのですが、海幸は決して許そうとしませんでした。この時悲しむ山幸を救ったのが海を治める綿津見の神とその娘の豊玉比女(姫)尊でした。二神は釣り針を飲み込んだ赤鯛を探し出し、水を自由に操ることができる宝物を添えて山幸を地上へ送り返しました。釣り針を返してもなお許さない海幸との争いに勝った山幸はその後、豊玉姫と夫婦になって幸せに暮らしました。

この物語は、遠い昔この国で山に住んでいた一族と海に住んでいた一族とが出会い、時には争いや話し合いを重ねながら次第に溶け合い、日本人という一つの民族になって行ったことを表していると言われます。

余談ですが、長野県の長野県安曇野市に穂高神社があります。ここは穂高の山の神をまつる神社ではありますが、この地方を古来治めて来た安曇氏の氏神でもあり、この一族は古代に海で活躍した一族でその祖先は綿津見神だと言われています。この神社の山車は船の形をしたもので毎年九月には「御船祭」が行われます。


※画像は宮崎県のご厚意によりお借りしました。