春はどこから

 2月になりましたがまだまだ寒い日が続きます。

ただ、寒の内と言われる1月に比べると2月は少しだけ春を追う気持ちになれると思います。

節分を過ぎれば立春、暦の上では春です。尾張の人は裸祭が寒さの底であると語り合い、早咲きの梅が咲くのを喜び、もう少しで奈良のお水取りだと話し合います。その場におらずとも行事を語り心で追うことで「もう少ししたら、もう少ししたら春だね」と思う気持ちが心を少しばかり温めてくれるものなのかもしれません。

多くの神社にとって2月の半ばから3月にかけて行われる祈年祭(きねんさい、としごいのまつり)は年に数回の大きな行事です。元々は国中のあちこちで行われていた今年の豊作を祈る祭が7世紀から8世紀には国の祭祀となりました。平安時代の延喜式(律令、当時の法律の解説に近いもの)によれば全国3132座の神社に幣帛(天皇からの直接のお供え)がありました。昔も今もそうですが、人間は食べることが何よりも大切なことです。食物が普通に育ち収穫できることがすべての生活の根源でもあり、祈りの根源だと思います。その意味で祈年祭は大切な神事なのだと思います。

祈年祭ばかりでなく春呼ぶ神事の一つを。一宮市浅井町東浅井の浅井神社(あざいじんじゃ)では、新暦初午の日に神事があります。この地区は古来絹織物が盛んな土地でありそのために遠く福島県の会津の蚕養國神社(会津も養蚕・絹織物の盛んな所です)に赴いて分霊を頂き境内にお祀りしています。この神事は蚕の餌となる桑の葉が出る2月の初めのこの時期に行われ、蚕の繭の形をした繭団子をお供えしています。生活の源である衣食住の主に衣の安泰を祈る祭です。